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ファンダメンタル講座

21世紀の新たな繁栄を求めて〜国際経営コンサルタント・大前研一氏

 国家元首や世界の大企業にも大きな影響力を持ち、世界を股に大活躍中の大前さんが、21世紀の社会を展望、「すでに地殻変動が始まっている」とのご託宣です。その中で生き抜くには「コンセプトを出す力」を持つこと、つまり右脳の発想力が重要であると力説、日本の教育を根本的に見直す必要があるとも・・・。常に問題をグローバルな視点で捉え、率直かつ大胆に発言する「大前節」は健在です。


 今、書店に出ている「ハイコンセプト」(ダニエル・ピンク著・三笠書房刊)は私が翻訳した。情報化社会の到来を予告したトフラーの「第三の波」に次ぐ未来予測なので、私は日本での題を「第四の波」としたかった。知己のトフラー氏に電話で相談すると「今度新しく『富の未来』という本を出すからダメ」と言う。内容は同じ「コンセプトを出す力」とのこと。

 コストだけを言うなら今や中国産が一人勝ち。では、21世紀、先進国は何でメシを食うか。それはコンセプトを出す力、または右脳の発想力ではないか。つまり、情緒、発想、感情、共感を呼び起こす力、それが重要になると思う。スウェーデンの学者が著した「成功のルールが変わった」にも「これから富を生み出すのは傑出した個人である」と指摘している。

 「コンセプトを出す力」、それを持つ人間に育てるのには、わが国の教育は万全と言えるか?ノーである。明治時代の教育を踏襲しているからだ。ダメな点が3つある。

@答えがあると思っていること・・・答えがあるから「教える」のだ。21世紀は答えのない世界。クラスが26人なら26通りの答えがあっていい。先生の仕事は存分に議論させることだ。
 議論の中で考える。人の言っていないことを言う勇気を培う。思いを皆に分からせる説得力を養う・・・これらが教育の場における大きな役割ではないか。デンマークでは「ティーチ(教える)」ではなく「ラーン(学ぶ)」を徹底させ、「ティーチ」という言葉を学校教育法で禁止した。つまり、「教える」ではなく「アシスト」することが大事と考えたわけだ。

 A指導要領があること・・・これは「先生が考えてはいけない」ことに他ならない。先生は指導要領を伝える役目なのか。国が答えを持つ、これは考える力に対する冒涜だと私は思う。B記憶させること・・・カンニングを許さないことである。が、世の中に出るとカンニングが当然。分からないことは誰かに相談し、いろんなルートから情報を得るのが当たり前。
 記憶、つまり覚えること、それにエネルギーを使う時代ではない。ケータイに入っているグーグルで検索すればすぐ出てくる。中高年の皆さん、これが分からなければ新入社員に聞けばよい。とにかく、21世紀は「考える」時代なのである。誰とでもうまくやるヤツはいらない。人とぶつかってでも、最後に「私が正しい」ことを証明できる人間が要るのだ。

 日本は不況といわれて久しい。その不況が始まったとき、個人金融資産が700兆円だった。日本はどうしようもないと言われた97年、900兆円になり、2000年には1300兆円、今では1500兆円となっている。さらに、団塊の世代の退職金から50兆円が預貯金に回るから、やがて1600兆円にもなる。企業も設備投資を減価償却の範囲内でやってしまうという。

 日本にはカネがうなっている。そのカネが世の中に出てこないのだ。「いざという時のために」貯えておくというのである。従って、日本人の死ぬ時の平均貯蓄は3500万円と言われる。米国人は家を一軒残して死に、イタリア人は貯金をゼロにして死ぬことを理想としているのに比べると、貯め込んで使わない日本人に私は言いたい「もっと人生を楽しめ!」。

 遺したカネはどうなるか? 最後は相続税にもっていかれるか、バカ息子、バカ娘に謹呈するか・・・。通帳とハンコを分けていて、どこにいったか分からない・・・そんな郵貯の定額貯蓄が膨大にあり、何年か経つと国がそのカネをパクれるように今度の民営化で法律を変えてしまった。ならばカネは使うべしで、世界旅行もいいが私は住宅に使えと言いたい。

 日本の住宅の寿命は30年と建築基準法で決まっている。阪神淡路大震災でも古い住宅が潰れた。東京であれと同じことが起ったら、あんな程度では済まない。3分の1が液状化するといわれる東京、しかも建物は前に駐車場のあるタイプが多い。長田区では全部潰れた。これらの対策が先ではないか。オリンピックなんてやっている場合じゃないぞ、慎太郎!

 「いいところに住みたい」「いい生活をした」という願望が日本人には強くある。定年退職後の人生は、3つの方向に分かれる。@都心に住みたい・・・奥さんとコンサートやショッピングに行きたい。A風光明媚なところに住みたい・・・暖かいところ、鹿児島、宮崎、高知、和歌山に民族の大移動が始まる?B故郷に戻りたい・・・それも故郷の近くの大都市に・・・。

 老後の日本人が一番困ることは友達がいないこと。私は来年友人と千葉で「アクティブシニア」という元気なシニアを対象にしたコミュニティ(6000人程度)を作ろうとしている。若い可愛いお譲さんに来てもらってピアノ教室を開いたり・・・いろいろ計画している。最初におカネを払ったら死ぬまで要らない。毎日の食事をするのに月10万円、年金内で十分。

 今、日本の最大の成長産業はペット。現在2600万匹のペットがいる。3人の人間に一匹のペットというのが現在の家族構成。ここに目をつけた生理用品のユニチャームは、高齢者おむつと共にペットフードで大成功している。「少子高齢化社会はダメ」と思ったら経営者は負けだ。「他に何があるか」を考えないと。1500兆円のカネが余っているのだから・・・。

 世界で繁栄しているところはイベントだけではない。とにかく毎日、カネも来る、情報も集まる、企業も来るというところを作らねばならない。「あぁ、よかったなぁ。安全快適、わが人生最高だった」と大往生することができれば言うことはない。今、日本は米国に貢いでいるが、そんなことをする必要はない。自分たちの次の世代のために貢ぐべきだろう。
2006年2月講演録


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