ほんとに出来るの〜
 |
|
| ロシア経済、落差大きい表と裏の実態〜塩原俊彦氏(高知大助教授) |
|
ベルリンの壁崩壊をきっかけにロシアは破綻、猛烈なハイパーインフレを体験した。公務員や年金生活者の苦境ぶりがテレビで報道されたことは、まだ記憶に新しい。98年に襲った金融危機を国債のデフォルトを断行して脱出、ここにきて原油資源の高騰を起爆剤に回復しつつありますが、その実態はどうなのか? 元朝日新聞モスクワ特派員で、「ロシア・ウォッチャー」塩原さんの現地からの報告です。
「ロシアは普通の国になった」と言ったのは、ハーバード大のシュライファー教授だ。が、年2回訪問し、ロシアを永年見続けている私は「ロシアは普通の国になりつつあるが、現在も決して普通の国になっていない」が実感だ。彼の言う「普通の国」とは03年の国民一人当たりGDPが8000ドル、腐敗やメディア抑圧がまだあるという点で紛れもなく中進国だ。
2000年5月、プーチンが登場するや否や税制を始めとする内政改革を断行した。付加価値税、物品税、個人所得税、統一社会税・・・などの税制のほか、土地法、労働法などを次々に整備した。が、問題はその法律がきちんと運用されているかどうかだ。私には、まだまだ疑問点が多い。特に、腐敗が進んでいるという点である・・・まさに「仏作って魂を入れず」だ。
*「普通の国」に向って、ロシアはマクロ的に形を整えようと懸命に努力しているが、ミクロの面では着々と成果を上げている。「フォーブスの世界の富豪ランキング、資産10億ドル上」の中にロシア人が27人も入っている。内訳は、石油、ガス10人、石炭、鉄鋼10人・・・27人中20人が資源にかかわる人物で、注目されるのはその殆どが40代という若さなのだ。
*彼らはソ連時代の国有企業を民営化するに当たり、国の資産を簒奪して取り込んでいる。例えば、世界の富豪21位のアブラモビッチという人物。ユダヤ人で石油会社のオーナーだが、03年に英国の名門サッカーチームの「チェルシー」を買収、一躍、世界に名を馳せた。が、プーチンの「ユダヤ人いじめ」の煽りを受けて、「石油会社株」の売却を強いられている。
*シュライファーが普通の国と言うが、ロシアに対する世界の評価はまだまだ低い。例えば、経済的重要度では世界の127国中、124位だ。これはルワンダなみだ。その他の指数も芳しくない。なぜか? 社会主義時代には、モノを安く買って高く売ればKGBの相互監視組織に引っ掛かって刑務所入りだ。そのような不思議な残滓が、ロシアには残っているようだ。
ところが、最近のロシアは「資源大国」として喧伝されている。米国務省の「地質調査所」の調べによると、原油埋蔵量では1位がサウジで2位がロシア。天然ガス埋蔵量はロシアが1位で2位のイランを大きく引き離している。この点については羨ましい限りのロシアだが、必ずしも手放しでは喜べない。資源大国が罹りやすい「オランダ病」というのがあるからだ。
北海油田の発見で資源大国となったオランダが、資源輸出で外貨が膨らみ為替レートを切り上げた結果、輸入品が激増、競争力のない製造業が駆逐されてしまったのだ。そのオランダ病がロシアを襲っているのだが、発症する気配がない。即ち、原油高騰の恩恵でロシアの外貨収入は激増、いまや外貨準備高は世界第 5位になっている。が、「ルーブルを切り上げよ!」という話はない。
中央銀行の為替管理がしっかりしていることもある。加えて、ロシアの場合、原油を自分の国で採掘して自らの精油所で加工し、そこでできたナフサをいろんなプラスチックに加工している。従って、石油価格がいくら高くなっても関係ない。自分の企業グループ内でやっているから、製品価格を低く押し止めることが可能。故に、製造業に対する打撃を抑止する要因となっている。
「資源大国、ロシア」の裏側に「レント配分」というのがある。普通、「地代」のことだが、いまのロシアでは「石油等の超過利潤課税」を意味し、これをどう配分するかが重要な問題となる。資源価格の変動は激しいので、他の資源国同様ロシアも「価格安定化基金制度」を一応は設けている。が、このレントには抜け道があって、企業家と政治家が結託、腐敗の温床となっている。
このレント配分の一部は政府にも入る。それがどんな使われ方をしているか。表向きは教育や医療をはじめ、いろんな国家プロジェクトを進めるとしているが、本当のところはどうか? 私はこう思う。石油、天然ガスの輸出増加で潤い続ける「超過利潤レント」、その一部が軍事費に回っていることは間違いない。これが資源大国ロシアの非常に重要な「裏側の問題点」ではないか。
いまのロシアを表わしている言葉に「ソビエツキライト」というのがある。「ライト」には2つえの意味があって、「コカコーラ・ライト」というように「軽い」と「右(民族主義的)」だ。プーチンは大統領就任後、「連邦管区」を7つ作って、地方自治に対する監視体制を確立した。その一方で、エリツィン政権時代に大きな勢力を持っていた新興財閥を脆弱化させようとしたのだ。
いま、ロシア政府には3つのグループがある。@は国家主義的なグループ。外国資本に国を閉ざし、ロシア企業を外国には絶対に売らない。その代表がセーチンという大統領府副長官だ。Aは、西欧式市場主義グループだ。彼らは外資に対して開かれるべきだと主張し、プーチン政権内には多い。Bは、その中間派で現実主義的な政策を打ち出す。イグナチェフ中央銀行総裁らがそれだ。
2008年春にはプーチンの任期が切れる。いまロシアは「ポスト・プーチン」の話題で持ちきりだ。05年11月、プーチンはメドベージェフ大統領府長官を第一副首相に、セルゲイ・イワノフ国防省長官に副首相を兼務させた。この2人がポスト・プーチンの有力候補だ。いまのロシアは官僚も政治家も腐敗している。そういう裏側のリスクを見極めながらビジネスを展開されたい。
|
|
|
|
|