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インド経済レポート〜ルチル・シャルマ氏(モルガン・スタンレー関連企業共同責任者)
政治情勢で中国ビジネスが難しくなるにつれ、日本企業の多くがインドへ目をむけはじめています。世界の金融関係者も「インドへの投資」に盛り上がっているようです。が、果たして?


明るい未来を描くインド
 インドは今、空前の好景気に沸いている。02年以降、途上国の株式市場に1500億ドル投資されたが、そのうち5分の1近くがインドに向けられている。その結果、1株あたりの利益に対する株価を示す株価収益率(PER)は平均15倍で、新興国の中で最も割高な市場となっている。世界の投資資金が集まるわけだ

 インドには、成長に必要な条件がそろっている。経済規模と株式の時価総額で3大新興市場の一角を占め、株式銘柄も多種多様だ。市場価値10億ドル以上の企業も100社を超える。そして外国人投資家は、1000社以上のインド企業に投資、優秀な人材や国の規模等でインドのポテンシャルは無限だと思っている。

 インドは年7〜8%の成長率を維持し続けるというのが、多くの外国人投資家の見方だ。好調な産業分野では、毎年の収益成長率が15%のまま半永久的に続くと彼らは考えている。アナリストは、インドがどれだけ早く、世界の経済生産の2割を占めた2世紀前の地位に返り咲くのか、予想を競い合っている。

 明るい未来を描きながら、改革に失敗していっこうに上昇しない南米やアフリカ・・・インドはその轍を踏まないだろう。起業活動は活発で、最悪の場合でも成長率は過去25年間の平均だった5.5%に落ちるだけと予想される。が、期待があまりに高いため、少しでも成長が鈍化すると景気後退と取られかねない。

気になる極左勢力の台頭
 そのため、現在の成長率を維持できるかどうかは大きな課題だ。インド経済と株式市場をみると、今の好況が世界経済のトレンドから派生していることがわかる。インドの成長は、インフレ率の低下と好調な株式市場を伴っている。が、新興市場全体の成長が鈍化すれば、インドの成長も少なからず鈍るだろう。

 さらに問題なのは、潜在的な成長力を十分に引き出せない他の新興国と同じ姿勢を、インドの政策決定者が見せ始めていることだ。即ち、インド人民党、国民会議派の政治家たちは経済改革への関心を失い、大衆迎合的な路線が幅を利かせている。特に、国民会議派は貧困層への福祉を充実させることに熱心だ。

 インドの一部が急成長を遂げる一方、多くの国民は今も旱魃や停電、無法状態に苦しめられている。そのため多くの選挙区で「ナクサライト」と呼ばれる極左勢力が台頭してきた。特に、停電は大都市で頻繁に起っているのだが、政治家は、いまだに「農民に無料で電気を与えるほうが票は集まる」と考えている。

 貧困の現状を考えれば、急成長も相対的には可能。インドの経済成長は、世界最速のペースで伸び続ける中国に匹敵するレベルになるだろう。だが、中国と同じような経済成長を実現するには、他の新興市場国が繰り返してきたパターンを辿ってはならない。好況でも大衆迎合主義に走らず、改革を続けるべきだ。

2006年3月講演録



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