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中東情勢と原油高の影響〜金子 勝氏(慶応大教授)
 因果関係にある中東情勢と原油価格・・・石油の価格上昇に強いといわれる日本にも、その影響は次第に及んできています。その辺の事情を金子 勝氏(慶応大教授)が分析します。 

●気になるイランの動向
 中東を展望すれば、まさに本格的な戦争状態だ。即ち、イスラエルによるレバノン攻撃をはじめ、イラクは内戦に近い状態だし、アフガニスタンではタリバンが勢いを盛り返している。NYタイムズほか世界各紙の報道では、サウジなど親米国家を含めアラブ諸国の「ヒズボラ支持」が急速に高まっているという。

 今、イスラエルが攻撃を止めれば、ヒズボラは政治的に勝つことになる。従って、欧米が「同時に攻撃を中止すべし」と言っても、聞く耳持たないといった状況だ。これが長期化するとイランを巻き込む可能性がある。そうなると輸入原油の13%をイランに頼っている日本は、蚊帳の外というわけにはいかない。

 他方、米国は「テロの温床」をターゲットとした米軍再編にとりかかっている。それに対抗するように、中国、ロシア、中央アジア5カ国が、「上海機構」をスタートさせた。当初はエネルギーの共同開発が目的だった。しかし、イランがオブザーバー参加したことによって、にわかに軍事的な性格を帯びてきた。

 今、世界のメディアが石油資源枯渇説を報じている。ロサンゼルスタイムズ、シカゴトリビューンなどだ。とにかく石油が行き詰っている。そこで、天然ガスに世界の注目が集まりだした。その埋蔵量、実はロシアとイランが世界の半分を占めている。日本人は楽観的だが、次第に地政学的リスクは高まっている。


●米国のハリケーンに要注意
 英国のインディペンデント紙によると、先のロシアサミットでプーチンは「地球温暖化対策」を主要議題にするため、周辺国に圧力をかけたが米国の反対で実現しなかった。ところが皮肉なことに、メキシコ湾の水温が急上昇、米国に今年も大型ハリケーンが襲いそうなので、保険会社が逃げに回っているという。

 米国の原油が1バレル80j(WTI)を超すのは時間の問題ではないか。FRBは、ずっと政策金利を上げてきたが、「中東情勢」と「ハリケーン」が重なると、深刻な事態になる可能性がある。米国経済も黄信号だ。4〜6月期のGDPが2.5%に落ち込んだ。前期が5.6%だったから、3%も落ち込んだことになる。

 企業収益は好調で輸出も伸びているが、住宅投資がマイナス6.3%というのが注目される。米国の住宅バブル崩壊の兆しが見えてきている。個人貯蓄率がゼロに近いので住宅価格の下落による消費への影響は少なくない。そのような状況下での原油高、ガソリン価格の高騰・・・これが金利の上昇圧力をつくりだす。

 対米輸出の多い中国も、当然影響を受ける。これらが回りまわって日本にも返ってくる。石油価格の上昇に強い日本だが、米国経済は減速、中国バブルが弾ければ、日本経済も悪化するという因果関係にあるので、その点が懸念される。ともあれ、これから発生する米国のハリケーン、それに注目する必要がある!

 (2006年08月 NHKラジオ・朝のビジネス展望より)



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