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デフレは本当に脱却したか?! 経済評論家、内橋克人氏

 低空飛行ながら景気の「いざなぎ越え」は間違いなさそうですが、様子がどうもおかしい。9月15日内閣府発表の月例報告では「デフレ脱却」の文言が10月以降に先送りされました。やはり、国内の消費市場の動きが弱いからでしょう。辛口で鳴る経済評論家、内橋克人氏の見方です。



− 輸出に不安材料 -

 先週発表された7月の機械受注統計は前月比製造業では18.7%の減少、好調と言われる景気の先行きに微妙な変化の兆しを感じる。各部門別に見ても、15業種中、10業種が減少。特に、紙パルプは前期比、75%減という状況だ。また、これまで堅調であった通信、建設も27〜22%に減少・・・気になることが多い。

 これらの要因は、輸出に不安材料があるからではないか。ともあれ、9月の月例経済報告で「脱デフレ宣言」、これが先送りされた。やはり、企業部門、設備投資、そして輸出、これだけに依存するという偏った景気拡大、これを「いざなぎ越え」とはやしてきたが、そのひずみがいよいよ表面化しはじめたということ。

 内閣府がデフレ脱却の判断をしたのは、4つの経済指標に拠る。@消費者物価指数、A国内総生産デフレーター、B需給ギャップを示す指標、C単位労働コストである。このうち@の消費者物価指数は、8月25日に基準年と対象品目の入れ替え、つまり計算方式を変えた。その結果、大幅下方修正になったわけである。

 このことを「脱デフレ宣言」先送りの理由にあげているが、実体経済それ自身に変化があるわけではない。やはり、石油製品を除いた消費者物価に、まだまだマイナスが続く可能性が出ている。この4月に発表された日銀展望リポート、ここ2年間の予測だが、場合によっては、これの修正も迫られるのではないか。


− 跳ね上がる在庫率指数 −

 このリポートは「内需と外需とのバランスのとれた景気拡大が続く。そして、日本全体の需給ギャップが、緩やかに需要超過の方に転じていく」、つまり国内市場における消費が伸びていくと予測している。明らかに脱デフレの方向を示唆していたが、どうも修正する必要があるのではないかと私は感じている。
 他方、民間設備投資は05年、実質7.5%増えており、06年も企業の潤沢な手元資金で高い水準で伸びているのは確かだ。しかし、鉱工業在庫率指数が4月から跳ね上がり、昨年来の高い水準になっている。特に、IT分野の在庫が急増している。00年を100とすると、この4月で147.5と過去最高を記録している。

 各社が積極的な増産に乗り出した液晶関連分野の在庫増、これが目立つ。生産過剰リスクが高まっているのである。設備投資の増大は結構なことだが、その分、在庫が積み増しされていくと、やがて「過剰負担」になる。これは決して軽視できない。その一方、GDPの57.6%を占める個人消費、これに陰りが出ている。

 即ち、06年4月〜6月期、さらには7月にかけて低迷を続けているのだ。景気の主役は、やはり企業部門から家計部門に移ることである。国内市場が盛り返さないと輸出依存構造だけが深まっていき、海外市場、とりわけ米国の景気動向に左右されるリスクが高まる。ともあれ、「デフレ脱却」に首を傾げざるを得ない。


2006年9月講演録



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