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シンガポールで考えるアジアの未来〜寺島実郎氏(日本総研・会長)

シンガポールはアジアのベースキャンプだ!

 これからアジアにおいて「大中華圏(グレート・チャイナ)」が、ひとつのキーワードになってくるだろう。つまり、台湾、シンガポール、香港の人口のうち78%が中国系。中国本土と政治的には一線を画しているが、経済的には連携を強めている。日本の貿易は対米が2割を大きく割り込む一方で、対大中華圏とは3割に迫る。

 また、対アジアでは5割に迫っている。したがって、わが国は大中華圏を中心にしたアジアとの貿易で稼いで「めしを食っている」と言える。その「成長アジア」のベースキャンプのようになっているのが、いまのシンガポールである。また、成長著しいインド、その「印僑」も十数%がシンガポールで活動している。

 特に、IT大国化しているインド、そのバンガロールはいまや世界のITソフトウエア開発の中心地。そことシンガポールをつなぐ光ファイバーが出来上がっており、これが海底ケーブルでグアム→米国本土へとつなぐ計画である。欧米とアジアをつなぐIT情報ネットワークのベースキャンプにもなってきている。

 シンガポール自体の面積は淡路島程度。そこから飛び立つ航空機は、すべて外国行きという冗談のような本当の話。狭い特殊な国だけに「バーチャル国家」という趣がある。即ち、さしたる工業もなく、生産力もない、加えて人口が巨大でもなく、資源を持っているわけでもない。それなのに世界に冠たる繁栄国家だ。



アジアのカネはアジアに!

 21世紀は目に見えない財、例えば技術とか、ソフトウエア、システム・・・そういうものを作り出す創造力によって国の力を発揮するという時代になる。
 シンガポールは、まさに好例ではないか。特に、IT、バイオについては、世界の情報基点になっている。そのことが来てみるとよく分かる。
 
 いま、政府がめちゃくちゃに力を入れているのが、「バイオ」だ。規制が緩やかで、新しい実験がいろいろできることもあって、世界中のバイオ投資がシンガポールに向かっている。
 バイオの中核になっているのが、医療産業の分野。いま大中華圏のお金持ちの人たちは、シンガポールに来て検診したり、入院している。

 そのシンガポールで世銀、IMF総会が開かれたわけだ。いまアジア全体の外貨準備高は3兆ドル。うち、日本、中国、韓国で2兆ドル持っている。
米国の外貨準備高は、わずか651億ドルしかない。ただ、米ドルは基軸通貨だから、「外貨」を持っていなくても、かならずしも国家の信認に関わるということではない。

 アジアが持っている3兆ドル、これを「米国へ、米国へ」ではなく、アジアへ還流させること。つまり、アジアでプールしたカネはアジアのために使っていく、これが非常に重要になってきた。アジアの台頭というエネルギーとか、世界システムの変化とか・・この会議も大きな潮の変わり目にきていることは間違いない。



2006年10月講演録


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